天然染色技術はウールの生地と相性がよく、自然な美しさと風合いを生み出します。ウールは合成繊維よりも天然染料を吸収しやすいのです。
100%再生可能
オーストラリアの羊は、毎年新しい羊毛を育むことから、ウールは完全に再生可能な繊維と言えます。
100%土に還る
ウール繊維が廃棄されると、土壌を豊かにする栄養素をゆっくりと放出しながら、数年の間に土の中で自然に分解されます。
自然な美しさ
天然染料は自然な美しさと風合いを実現します。
天然染料は、植物や鉱物、さらには貝殻や昆虫などの天然の原材料から抽出されます。天然染料には2つのタイプがあります。媒染剤(色止め剤)が必要な染料と媒染剤を使用しなくても繊維に着色、定着する染料です。
植物由来の天然染料には、大青、インディゴ、サフラン、アカネなどがあります。無脊椎動物由来の天然染料には、ティリアン・パープル、コチニール、クリムゾン・ケルメスなどがあります。他の天然由来の染料としては、バクテリア由来の染料や、食品廃棄物などから抽出した染料などがあります。
染色の仕組み
天然染色技術
ウール、コットン、シルクなどの天然繊維は、合成繊維よりも天然染料をよく吸収します。天然染料はウールの生地と相性がよく、自然な美しさと風合いを生み出すことが立証されています。
使用する天然染料によっては、染色プロセスに入る前に媒染剤で生地の下処理をする必要があります。媒染剤なしでも繊維に定着する天然染料もあります。生地に着色のための下処理を施したあとは、使用する天然染料、生地、求める発色によって、数段階の染色プロセスが待っています。
ウールマークの天然染料パートナー
Tintoria di Quarenga
TINTORIA DI QUARENGAは、200種を超える天然の原材料を用い、ウールなどの天然繊維の染色に適した幅広い色合いや濃淡を生み出す、NATURALEという天然染色プロセスを確立しました。このイタリアの染色業者は、革新的なこのプロセスによって天然染色業者では初となるウールマーク認証を受け、デザイナー、小売業者、顧客がよりサステナブルな選択肢を求める中で、業界からの支持を集め続けています。
TINTORIA DI QUARENGAのNATURALEは、212種類の草、ハーブ、根、花、樹皮で染色した革新的な糸のコレクションです。天然の原材料は世界各地から持続可能な方法で調達され、そのうち65%以上がイタリア国内で調達されていると、共同経営者で研究開発責任者のアンナ・メッロ・レッラ氏は説明します。「色合いは幅広く、繊細なパステルカラーから濃いブルーやブラックまであります。染色には、化学的な薬品、添加物、粉末染料、抽出物などは一切使用していません。」
BioDye
ウールマークのパートナー企業であるBioDyeは、自然を最大限に活用した科学的なブレークスルーを達成し、100%天然の染料や生分解可能な成分を環境にやさしいプロセスで生み出しています。ウール製の糸や生地は、無害な媒染剤を使用して、天然染料で多彩なカラーバリエーションに染め上げられ、洗濯機で洗っても色落ちやにじみを起こしません。また、BioDyeの天然染色ウール生地は紫外線吸収性にも優れています。
BioDyeの天然染色技術を使用することが環境配慮に真摯に取り組む姿勢の裏付けとなるのは、この染色業者が採用しているプロセス全体によるものです。染料のベースとなる植物は、荒廃した森林の再生を促し、サステナブルな方法で染料となる葉を集める農村部の女性たちに収入をもたらすこともできます。廃棄物は堆肥として、適切に処理をされた水は灌漑(かんがい)用水として利用されています。
天然染料を利用しているウールマークのパートナー
VICTORIA BECKHAM(ヴィクトリア・ベッカム)
ヴィクトリア・ベッカムは、彼女が手がける高級ブランドの最新ニットウェアコレクションに、ウールマーク・ライセンシーであるTINTORIA DI QUARENGAの天然染色プロセスを採用しました。
花、葉、実などを使用することで、ヴィクトリア・ベッカムは化学物質を使用することなく、温かみがあり自然を思わせる色調を実現すると同時に、サステナビリティを核としたコレクションを創り上げました。
BLINDNESS、FENG CHEN WANG(フェン・チェン・ワン)、RICHARD MALONE(リチャード・マローン)
2020年インターナショナル・ウールマーク・プライズのファイナリストであるBLINDNESSとフェン・チェン・ワン、そして2020年インターナショナル・ウールマーク・プライズ受賞者のリチャード・マローンは、ウールコレクションに天然染料を使用しました。BLINDNESSは自然発酵のプロセスを利用し、植物からインディゴ染料の色素を取り出し、ウール生地やウール糸を染色することに成功しました。フェン・チェン・ワンは、地元の職人グループと協力し、さまざまな植物やハーブティーから天然色素を抽出し、化学染料に代わるサステナブルで環境にやさしい天然染料を作り上げました。それを手作業で、デッドストックの未加工ウールの染色に利用したのです。
リチャード・マローンは、インドの織物職人団体と協力し、彼のブランド全体で、すべて植物由来の染料を使用しています。彼のインターナショナル・ウールマーク・プライズ・コレクションでは、アゾフリーな天然染料を使用した手織りの伝統的な生地が採用されています。この染料は、雇用と環境の両方を維持するべく再生可能な取り組みを行う、保護された農場で作られたものです。
ベンバダムという植物から抽出した色素はライラック色を生み出し、クリトリアという植物からはスカイブルーが得られます。マリーゴールドとミロバランはカルンガリという植物の色を引き立て、ウェドリアは甘美なグリーンを生み出して、コレクションを彩りました。